雑記ブログ
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アルバム『THE LAST』の世界観に引き込まれて5日が過ぎた。

生ライブ視聴会に参加した時は「ひとりで最後まで聴ける自信がない」と思ったが、11曲を続けて聴かせる構成になっており、途中で聴くのをやめたら後悔してしまうアルバムだ。

「スガシカオって、今、何やってるの?」「昔は聴いていたのに遠ざかっていた」という方にこそ聴いてもらいたい。

ヒットチャートをかけぬけた後の答え

「いつもふるえていた アル中の父さんの手」という衝撃的な歌詞から始まるこのアルバム。1曲目の『ふるえる手』は、最後の『アストライド』の序章として生まれたものである。しかし、1回目のデビュー曲『ヒットチャートをかけぬけろ』を彷彿(ほうふつ)とさせる歌詞でもある。

人の道は平たんではない。好きなことを続けるためには、何度も壁をぶち壊さなければならない。一度はヒットチャートをかけぬけたスガ氏が突き破った大きな壁が独立だとしたら、ようやくスタート地点に立てたということなのだろうか。

今回のアルバムには「J-POPになるまえのスガシカオ-FUNKでもROCKでもない“剥き出しのスガ シカオ”」というサブタイトルのようなものがついている。12月の視聴会で7曲を聴いた時に、「わざわざジャンルでくくるとしたらスガシカオだ」と思った。その感覚は間違っていなかった。

アルバムを手に取ってフルで聴いた時、「ポップなスガシカオしか知らない人は絶対に聴けない」という感想を抱いた。それほどスガ色が強く、人間のドロっとした部分が詰まっている。このアルバムのために存在しているといっても過言ではない写真家・インベカヲリ★さんの世界観が、さらにスガ色を濃くしている。それは決して悪い意味ではなく、誰もが体の奥底に隠して生きているものでもある。そこに向き合える人だけが、このアルバムの世界観に浸れるのではないだろうか。

絶妙な愛の表現者・スガシカオ

スガ色が強いとは言ったが、実は愛のあふれるアルバムでもある。というのも、歌詞の中には家族・恋人・元恋人・友人・自分以外の誰か(ファン)・自分が登場するからだ。

愛はポジティブな意味に捉えられることが多いが、実はそんなに奇麗なものではない。例えば家族のなかで渦巻く愛は、好きや嫌いで言い表せるものではない。父⇔母、両親⇔自分、自分⇔兄弟姉妹…。個々に切り取っていくと愛の濃さは全く違う。いとしい感情が芽生えることもあれば、憎しみや嫉妬が生まれることもある。

恋愛や友愛でも似たようなことが言える。醜い感情を、スガ氏は隠すことなく表現している。しかし、多くの人は押し殺して生きているのではないだろうか。醜い感情を押し殺した結果、他人からすれば「そんなことで?」というような理由で、いとも簡単に人を殺めてしまっている。

『あなたひとりだけ 幸せになることは 許されないのよ』の歌詞は絶望的にも思えるが、しっかりと聴き込めば必ず一筋の光に出合えるようになっている。

『海賊と黒い海』の歌詞は、心の闇やどうにもならない憎悪で壊れそうな時、また別の愛のカタチが現れたら人は救われるのだとさえ感じさせる。

スガ氏の歌詞は読むと吐き気を催す曲もあるのだが、メロディーが乗るとなぜか平気で聴けてしまう。その答えを村上氏がライナーノートで書いていた。生や死、愛欲や性を表現した歌詞に嫌悪感を覚えないのは、どうやら“エッジの効いた「こぶしレス」の独自の歌唱”と“聴き取りにくさ”が理由になっているらしい。ライナーノートを読んで、腑(ふ)に落ちた部分だ。

アルバムを聴いて、ライナーノートを読み、改めてアルバムを聴いてみる。『THE LAST』がいかに素晴らしいアルバムであるかに気付けるだろう。だから、ぜひ、「やっぱり初期のころが一番」と思っている人に聴いてもらいたい作品である。

中毒にさせる音楽構成

『THE LAST』の良さは構成にも表れているように思う。ひとつひとつの曲は全くの別物であるのに、『ふるえる手』から『アストライド』までがつながっているかのように聞こえるのだ。まるでクラシックのような構成で、シャッフルをすると変な気分になる。

『ふるえる手』『大晦日の宇宙船』の2曲は、決して気持ちの良い終わり方ではない。音楽の授業に忠実になるならば、ハ長調はド(主音)で終わるのが基本だが、この2曲は例外の終わり方を迎える。だから、ここで聴き終えることができなくなり、『あなたひとりだけ 幸せになることは 許されないのよ』まで一気に聴きたくなるのだ。

3曲目で休ませてくれるかと思いきや、ここでも不安定な終わり方をして休ませてくれない。そのまま曲調の変わる名曲『海賊と黒い海』を聴くと、今度はフェイドアウトという手法で次も聴かざるを得なくなってくる。心の中では「一回、休ませて」と思うのだが、インベさんの写真集に影響された『おれ、やっぱ月に帰るわ』もフェイドアウトで終わり、『ごめんねセンチメンタル』でほんの少しだけホッとできる。

ホッとしたのもつかの間、曲調がガラリと変わって欲望ゾーンに突入する。タイトルからして悪臭を放っている『青春のホルマリン漬け』、スガ名物・下町シリーズの『オバケエントツ』、ファンキーな『愛と幻想のレスポール』がフェイドアウトで連なる。そして、さまざまな別れを経験した人にこそ響く『真夜中の虹』に突入する。映画に例えるならば、クライマックスシーンである。

『真夜中の虹』は、ハワイのこの幻の虹を希望や奇跡として描き、自分の弱さ、生と死、願い、現実、友情、思い出、いろいろな想いをぎゅっと歌詞の中に凝縮しました。

(【Shikao Times Z】Vol213/アルバム制作ノート その29より引用)

生まれし者は必ず死に向かって歩み続けている。こんな当たり前の現実を受け入れられない状況に陥った心の弱さを、「サヨナラさえ言わなきゃ お別れからずっと逃げ切れるかな… ぼくのナメクジ色の心を 現実は メッタ切りにした」と歌われた時には心臓をえぐられた気分になった。心は限りなく黒に近いグレーになっているのに、望みを感じさせる曲調に仕上がっているから救われた気分になる。

アルバムの中で、唯一、配信シングルとして世に出ていた『アストライド』で『THE LAST』が締めくくられ、ようやく一歩前に進む希望を抱かせる。

アルバムを初めてフルで聴いた時は、「しばらくは聴けないだろう」と動けない状態になったが、既に何度もリピートをしている。何がそうさせるかは分からない。『アストライド』に向かって走りたいのか?スガシカオにどっぷり浸りたいのか?自分自身のウミやサビを吐き出したいのか?今は答えが出せない。

スガ氏いわく「4FLASHERのような迷作」が私のナンバー1だったが、間違いなく『THE LAST』がナンバー1に変わった。そう感じているファンは多いかもしれない。「そんなにスゴイのか?」と疑っているかつてのファンは、だまされたと思ってスガシカオの最高傑作に触れてほしい。

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